危機状態

心理学の用語で危機状態という言葉があります。

この言葉からも分かるように、危機的な状態です。

ただ、一般的な危機的な状態とは違います。

 

例えば、車の運転中に他の車にぶつかりそうになると、危機的な状態に感じますね。

これは一般的な危機的な状態ですが、心理学の危機状態とはまた違います。

心理学の危機状態とは、普段通りのやり方で回避できない状況が生まれた状態を危機状態と言います。

 

具体的にどのような状況か説明しますと、

大学生が居て、お金が足りないとアルバイトをしていたとします。

そうすると、この学生はお金が無い状態→アルバイトをするということで対処(コーピング)していました。

 

しかし、ある日突然、親が失業してしまい、学費も払えなくなったと言われたとします。

そして、学費の為にも、普段のアルバイト代に追加で10万円を稼がないといけなくなりました。

そうすると、この学生の中でのお金が無い状態→アルバイトをするという対処方法では、

切り抜けられなくなり、どうしようか分からなくなってしまいます。

これを心理学でいう危機状態に陥るのです。

 

この危機状態が発生する要因は、就職・結婚・出産などのライフイベントに関わる発達的危機と

台風や地震、失業など突発的に発生する状況的危機があります。

危機状態に陥ると、不安や恐怖などから、抑うつの症状が出る場合があります。

 

このような状態が長く続くと病的な状態に陥る可能性が出てきます。

しかし、心理学的には危機状態は実はネガティブと捉えておらず、

この危機状態を突破するとクライエントは大きく成長すると捉えており、

個人の成長を促す転機と捉えています。

 

実際に地震被害が日本では多いですが、だからこそ地震でつぶれない家を作ろうと頑張っている方々もいます。

危機状態に対して無気力になるだけでは、このような挑戦はありません。

危機状態を脱し、次の行動の源泉に出来ているからこその行動だと思います。

 

では、危機状態に陥ったとして、通常の方法では切り抜けられないので、どのようにすれば良いでしょうか。

カウンセラーはこの時、危機介入という方法を取ります。

それは、危機状態は長く続くとダメなので、「すぐに相談」に乗ります。

 

 

さらに、危機状態にあると恐怖や不安などがある為、「信頼関係」をしっかりと構築し、

話を聴きながら、「本人が問題を把握することを支援」していき、

 

そして、本来は本人が切り抜け方を見付けるのですが、危機状態は今まで本人が対処した方法が通じず、

それ以外の対処方法も思いつかないので「積極的に情報提供」を行います。

この情報提供は解決方法ではありません。

勿論、解決方法を持っていれば良いのですが、そのような機会は少ないです。

むしろ、解決方法に繋がるかもしれない方法を知っている方や機関を紹介していきます。

 

例えば、学費が払えなくなるかもしれないのであれば、

大学の奨学金窓口や公的な奨学金制度を扱っている団体、

さらに、本人の意思にもよりますが、休学しお金を稼いで復学する方もいるので、

そのような事例の提供も行います。

 

このような情報を本人が得て、さらには周囲の方々のサポートを受けて、

本人が危機状態を切り抜けると、

大変な危機を乗り越えた経験と自信が、成長に繋がっていきます。

まさに、ピンチはチャンスのように感じます。

 

私もうつ病や失業などの危機状態を、周囲に支えられて、

何とか切り抜けたからこそ、現在、このようなカウンセリング業務をさせて頂けていると感じます。

 

もし危機状態にあると感じるのであれば、まずは周囲に相談し、アドバイスを貰って下さい。

周囲に相談ができる方が居なければ、私にご連絡を頂く方法もあります。

ピンチはチャンスと積極的に思って、切り抜けていきましょう。