会話のボール

会話のキャッチボールという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
挨拶をして、挨拶を返す。
質問をして、答えを返す。
このようなことを会話のキャッチボールとして、伝えています。

例えば、面接などで、質問に関して、
的確な回答をしていないと、
会話のキャッチボールができていないという表現をしたりします。

ただ、先日、先輩のカウンセラーから言われた言葉が
非常に考えられることがありました。

カウンセリングの場面では、クライエント主体となって、
相談を進めていきます。
来談者中心療法と言われています。

では、クライエント中心となって話を進める際に、
会話のキャッチボールは必要でしょうか。

キャッチボールとは、こちらが投げたボールを
相手が受け取ります。
ただ、別の表現で言うと、投げたボールを相手に受け取らせているのかもしれません。

会話のキャッチボールでは質問を投げ掛け、
クライエントに受け取らせて、回答を引き出そうとする行為なのかもしれません。
普通の会話では問題ないかもしれませんが、
カウンセリングでは深い話や、クライエントが向き合う覚悟が求められる話もあります。
その際に、キャッチボールのようなやりとりでは、
クライエントの気持ちを、タイミングを置き去りにしているということです。

カウンセリングの場面では、会話のボールは投げるのではなく、
相談のテーブルの上に置くのです。
クライエントの前に話題を置いて、取るも自由、取らないも自由、放置することも自由。
全てをクライエントにお任せするのです。

例えば、服屋さんに入ったとします。
そこで、店員さんに「この服、どうですか?試着室はあちらです。」と投げ掛けられても
非常に困りますね。
試着したくないのに試着するのも嫌ですし、さらに「いりません」と答えても角が立ちます。

会話のボールを置くという行為は「いかがですか?必要であればお声掛け下さいね」と
相手に決定権をゆだねる行為だと思います。

この話を聞いて、私はもっと相談場面での会話をクライエントにゆだねて、会話を置き、
クライエントの意思や思いを大切にしていきたいと感じました。