無知の知

先日に、広い視野がカウンセラーにとって必要な資質と説明しました。
他にも、もう一つ大切な素養があります。
それは、知らないことを知ることです。

カウンセリング経験が長くなると、何でも分かったような、
カウンセリングできるような気分に陥ることがあります。

しかし、それはただの勘違いであり、人の心はそんな簡単には分かりません。
多くの推察は出来ますが、クライエント自身で理解できない心の動きがあり、
理解できていないことを説明されて推察するので、
答えは簡単に見付かる訳ではありません。

もし、本当に人の心に関する全てが分かって簡単に解決できるという人が居るのであれば、

現在、地球上にある精神疾患で働けない方や治療代などの数兆円分の損失を
解決することが出来るということですので、
ノーベル賞どころの話ではなくなります。

それが出来ないからこそ、未だに多くの方が悩んでいる方が多く、
その方々の悩みを解決したいと多くの人が勉強や研究をしているのです。
 
では、このような勉強をしっかりしたらカウンセリングなどで
人の悩みが解決できるかというと、それもまた違います。
 
勉強をしっかりとして、人の心の働きや仕組みを学んだ上で、
カウンセリングの時には、全てを空っぽにして、
目の前のクライアントのことを何も知らない、
全て教えて欲しいと思いながら聞く姿勢が必要です。
 
目の前のクライアントが親を恨んでいたとしても、
子供を愛せないと言っていたとしても、
人に挨拶が出来ないと悩んでいたとしても、
常識や当たり前は全て脇に置いて、
このクライアントの考え方が出来た背景を
自分は何も知らないと思って、話を聞く姿勢が必要です。
 
カウンセラーには学び続ける姿勢と
「無知の知」ともいうべき、自分は何も知らないということを知っているともいうべき、
自分はどれだけ勉強しても、まだまだ知らないことがあるということを
知っておくことが必要です。
 
私もまだまだ知らないこと、分からないことが
たくさんあります。
勉強を惜しまず、そしてクライアントのお話を聞かせて頂く際には
「無知の知」の姿勢で接したいと思っています。