円環的因果律

何か問題が起こった時に、原因を探そうとしてしまいます。
この時に、原因を発見した際に改善策を考える事で、
次に問題が起こらなくなる可能性が高くなるためです。

 

ただ、このような対処方法は、原因 ⇒ 結果と結びついているモノが
はっきりしている場合にだけ対処できる方法です。

例えば、遅刻をしてしまった場合に、原因が昨日の夜更かしが原因と分かると、
夜更かしをしないように心掛けると寝坊しなくなります。

 

この直接的に原因と結果が結びついている事を直線的因果律と言いますが、
一方で、原因と結果をはっきりと分けられないモノを、
円環的因果律と言います。

 

例えば、遅刻に関して、仕事の量が許容量を越えており、ストレスが溜まった結果、

不眠症になり、なかなか寝付けず、朝も起きられない体質になっているとします。
すると、夜早く眠るようにして下さいと言っても意味がありません。

そして、体調が悪い中、働き仕事がより上手く行かずストレスが溜まり、
悪循環になるのです。

 

仕事 → ストレス
↑    ↓
寝坊 ← 不眠

 

この考え方は、家族療法で用いられるのですが、
例えば子供が引きこもり、不登校、摂食障害などの問題を起こしたとしても、
その原因は子供にあるのではなく、家族内に円環的に備わっている場合が多いのです。

 

その為、家族全員で現在の問題に対処し、お互いがお互いに変わっていくことで、
原因も結果も全て改善していくように働き掛けるのです。

 

ただ、最近、家族関係以外にも、この円環的因果律を感じる事がありました。
それは、日本に住む私たち全員に関係する事です。
それは、少子高齢化問題です。

 

少子高齢化は誰の問題でしょうか、そして誰が原因なのでしょうか。
高齢の方は、現役世代である私たちが子供を作らないからだと言うかもしれません。

現役世代は、生涯賃金も下がり安定した生活が期待できず共働きをしないと生活できないのに、
子供なんて作れない。こんな風にした人たちに原因があるのだと言うかもしれません。

そして、子供たちは、何で自分たちが見ず知らずの人の生活を一人につき一人も支えないと
いけないの?大人たちが好き勝手してきた結果なのに、どうして?と言うかもしれません。

 

ただ、この問題は円環的因果律なのです。
つまりは、誰かが原因を作り出しているのではなく、
そこに関わっている全員が原因を作り出しており、その結果も全員が引き受ける事になるのです。

 

私は少子高齢化が良いとも悪いとも考えてはいません。
ただ、誰かが誰かを責める事を続けるのではなく、
本気で意見交換をしないと、気付いた時には非常に大変な事になっていると思います。

 

自分も原因を作っている一人だと考えて、責任を持って、
身の回りに起こっている問題を考えてみてもいいかもしれない、
そんな事を、ふと60年後の人口構成比を見て、感じた今日この頃です。