一貫性と、多面性

朝に言った事を、夕方に変える人の事を四字熟語で、
「朝令暮改」といいます。


これは、当てにならない政策などを指し、
決して好まれる使い方ではありません。


例えば、

朝礼で「会社は利益を出してなんぼだ!顧客満足度なんて関係ない!とにかく何でも売ってこい!」と言われて、
夕方にクレームが来た後に、

「会社は顧客満足度が大事だろ!利益ばかり考えるな!何でも売れば良いって事じゃないぞ!」
と言われたら、どう感じるでしょうか?


やる気が無くなるかもしれません。


人は、一貫した主張や考え方をする人を好む性質があります。
そして、自分自身も一貫した行動をしたいと思う性質があります。
これを、「一貫性の原理」の原理と言います。


この一貫性を利用した交渉術や詐欺のテクニックがあります。
それは、「フットインザドア」「ローボールテクニック」と呼ばれるものです。
ご存知の方も多いのではないでしょうか?


「フットインザドア」・・・
 初めにYESと答えやすいお願いをした後に、後で大きなお願いをする事。
 実験例)ある女子大生に環境保護のアンケートをお願いし、答えて貰います。
      答え終わった後に、数キロ離れた土地に木を植えるボランティアをお願いした所、
      8割の人がYESと答えてくれた。
      一方、アンケートも無く、お願いした時は半数以上の人は断った。
 詐欺例)道端で商品アンケートを貰い、もう少し詳しいアンケートをお願いしたいので、
      喫茶店まで来て下さいとお願いをし、そこで怖いお兄さんが出てくるなど。。。

 

「ローボールテクニック」・・・
 初めに自分で選んだ選択肢に関して、後に不利な条件を示されても、そのまま選び続ける事。
 実験例)学生にAクラス(2倍の単位を貰えるが退屈)、Bクラス(1単位しか貰えないが面白い)の内、
      1つを選んで貰います。
      その時に、ある学生群(α)にはAを推薦しつつ選んで貰い、

           別の学生群(β)にはAを半ば強制的に勧めます。
      そして、選び終わった後に、「実はAクラスの単位は2倍にならず、1単位しか貰えない」と説明します。
      その結果、ある学生群(α)の内、Aを推薦され自分の意志で選んだ人は、

      Aを選び続ける人は6割でした。
      一方、強制された学生群(β)は、AからBのクラスに移る人は6割を超え、

      Aを選び続けた人は4割以下でした。
 詐欺例)テレビが格安で販売と説明し、購入すると決めた後に、

      「メンテナンス契約必要です。送料は別途5千円必要です。」
      と説明し、結果的に量販店よりも高い値段で販売する。


さて、このように「一貫性の原理」を逆手に取った詐欺があるぐらいに、
一貫性を好む人が多いですが、人間は必ずしも一貫してはいません。


嫌いと言いつつ、実は気になる・・・。
絶対に自分にはできません!と言いつつ、いざその場になったら、やりきってしまう・・・。
普段は虫も殺せないぐらいに臆病なのに、切れたら鬼も倒すのじゃないかと思うぐらいに凶暴になる・・・。


こんな風景は、誰でも一度は見た事があると思います。
人の内面は複雑で、一貫性なんて無く、むしろ多面性です。


気分屋な人は嫌われそうですが、
むしろ、多くの人が元々は気分屋で、
その時の気分により、好きだったり、嫌いだったり、変わっていきます。

 

さらに、ころころと世の中がビックリするぐらいに変わる時代です。
昨日、正しかった事が、今日も明日も正しいとは限りません。


一貫性を必要以上に追い求め、しんどくなる必要はありませんよ。
と感じる方に出会いました。


自分は、こういう人間だから、こうあらねばならない。
一貫性の無い奴はダメだ!
そんな風に自分に目くじらを立てていると、自分や周りにいる人を追い詰めるだけになってしまいます。


まずは、自分の多面性を受けとめ、
色々な側面を楽しめるぐらい、余裕を感じていきたいですね。