気付かぬ幸せの喪失

あるクライアントのお話です。

 

その方は、去年の年末にある事故を起こしてしまい、

そこから全てを失ってしまいました。

 

仕事も、お金も、家も。

 

その事故は、その人の責任というよりも、

一生懸命働き過ぎによる居眠り運転の事故だったようです。

ただ、実際に起こしてしまったのも事実、

責任を取る為にお金を払い、そのお金を工面する為に、

長年過ごしてきた実家を売却されました。

 

その家は、自分が生まれた頃から住んでいた家で、

父親が建てて、譲り受けた、小さい頃からの思い出が沢山詰まった家でした。

 

手放す時は、涙が止まらなかったそうです。

小さい頃に遊んでいた庭、母親の手伝いで洗濯物を干すのを手伝ったベランダ、

寝ている布団を引っぺがされて文句を言っていた寝室、

家族でテレビを一緒に見た居間。

色々な思い出が出てきたそうです。

 

意識をしていなかったけど、気付かなかったけど、

自分にとってかけがえの無い故郷だったんだ。

今からこの故郷を自分の手で手放すんだ。

そのような気持ちになったそうです。

 

私は、ただ聞かせて頂くだけで胸が詰まる思いでした。

私も実家があり、生まれた頃からの家の為、喪失を考えると

非常に悲しい気持ちがこみ上げてきます。

 

もしかすると、震災で故郷を失くされた方も同じかもしれません。

むしろ自分の手ではなく、何も考える暇も無かった分、さらに喪失は大きいかもしれません。

 

この方は、1時間ずっと話をされ、最後にこう言って頂きました。

「意識してなかったけど、私にとって本当に大切な物だったんです。

 幸せな思い出が詰まった家でした。

 頭では分かっていましたが、悲しみが収まらなくて。

 ずっと誰かに話したかったのですが、聞いてくれる方がいなかったので、

 今日は聞いてもらえて良かったです。」

 

喪失はとても悲しい事です。

クヨクヨするな、いつまでも引き摺るな、そう言われても心に引っ掛かります。

話す事で、充分に気持ちを吐き出すことで、少し整理が付く時もあります。

 

特にそれが日常の中で気付いてなかった幸せの時は、

予想していなかった喪失感に捕らわれ、途方にくれてしまう時もあります。

 

どうか、その時は抱え込まずに吐き出して下さい。

 

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コメント: 2
  • #1

    sakura (金曜日, 23 12月 2011 17:35)

    ご無沙汰しています。
    本当にその通りだと思います。
    私の場合はいつも「気付かぬ幸せ」の事を「手の中にある物」と例えます。
    手の中にある物、既に持っているものには気付かないものだと私は考える
    からです。その「手の中にある物」を失って、初めて人は自分がその大切な物を持っていたことに気付き、それを失くして初めて喪失感と後悔を感じるのだと私は思います。

     日常に、個々に様々な不満を聞きます。些細な事から、大変な事まで
    本当に様々です。失ってからでは、どうすることも出来ない喪失感と後悔
    に襲われるよりも
    「どうか気付いてください。失う前に
     今 あなたの手の中にある物に。
     あなたがどれだけ素晴らしい物を手の中に握っているか、
     それを失くせば次は簡単に手に入らないのだと言う事に」
    人は気付かない幸せを日常に当たり前に自分にあるように生活している
    ことが多く見受けらるように思います。

    いつの時代も人が生きていく上で沢山のストレスがあるでしょう。
    一生を通して不満も山ほどあるでしょう。だからこそ私は伝えたいのです。
    後悔するほど辛くて苦しい事はない。
    なぜなら後悔は、過去に戻って修正することは不可能だから。
    「ならば、今一度 あなたの手のひらを見つめてみてください。
     握った拳を開くと、そこには何がありますか?
     毎日「いってらっしゃい・お帰りなさい」と言って
     あなたを送迎してくれる家族ですか?
     毎日、あなたの為に食事を作ってくれる妻orお母さんですか?
     落ち込んでいると、「どうしたの?」と心配してくれる友達ですか?
     大好きな仕事が出来る職場で働けることですか?
     地位・名誉・信用・人脈・お金、色々あると思います。」
    思い出してみて下さい。あなたの環境、あなたの周りにいてくれる人達を

    決して一夜で出来た産物ではなく。あなたの長年の努力によるものです。
    どうか大切にして下さい。
    「不満」おおいに結構です。誰かに聞いてもらいましょう。
    だけど忘れないで、握った拳の中にあなたの宝物が一杯詰まっているから
    どうかそれだけは落とさないようにしっかりと握っていてください。
    どうかその手のひらにある物に今、気付いてください。

    と私は伝えたい。
    この方のように不慮の事故で失くすこともあるでしょう。
    どんなに大切にしていても不可抗力のことも多々あると思いますが、
    だからこそ「今気付いて今大切に出来たらいいな」と私は思います。


     

  • #2

    中村健三郎 (土曜日, 24 12月 2011)

    sakuraさん

    お久しぶりです。
    コメント書き込みありがとうございます。

    sakuraさん自身、同じ様な相談を受けてこられているんですね。
    伝えたい想いがヒシヒシと伝わります。

    「気付かぬ幸せ」は「手の中にある物」なんですか。
    まさに、そうですね。手の中に握ってあり、当たり前すぎて、
    気付かないんでしょう。

    この事を、皆が気付けば、今の自分に不満じゃなく感謝の気持ちを抱いて、
    過ごして頂けると思います。

    今日は偶然クリスマスイブです。
    一緒に過ごす人と祝う日です。
    そして、お正月。
    地元に帰り、家族と会ったり旧友と会う時です。
    これらで自分の帰る場所・手の中にある物を見付ける機会になって欲しいです。

    そして、これらが無いと仰る人も、今後後悔しない様に、
    今から見付けていって頂ければと思います。
    本当に願い、その為に行動すれば、きっと見付かるはずですから。

    今を大切に、ですね。