「知っている」と「知らない」の行動の違い

ある会社の上司と新人の部下がいました。

 

この上司は、新人の部下に名刺入れを用意するようにこう話しました。

「明後日からお客さんに挨拶して回る。その為に名刺を用意したから、

　丈夫で見栄えの良い名刺入れを用意しなさい」

 

すると翌日、部下は名刺入れを買ってきたのですが、

その名刺入れを見て、上司は言いました。

「この名刺入れは何だ。アルミケースじゃないか。

　何処でこんなのを買ったんだ。」

部下は言いました。

「名刺入れを探した時に、皮の名刺入れしか見付からず丈夫そうではなかったのです。

　ようやく100円均一の店でアルミケースを見付けて買ったのです。」

すると上司は言いました。

「これでは見栄えが悪いじゃないか」

 

 

この食い違いはどうして起きたのでしょうか？

 

上司は様々な名刺入れを買った事も有り、お客さんの名刺入れも見てきたので、

どのような名刺入れが丈夫で見栄えが良いか「知って」いました。

 

 

一方の部下は、初めての事で何が見栄え良いかは分かりません。

 

例えばセパタクローという競技で使うボールを明日までに買って来てと言われた時に

どのような素材のボールを買えば良いか、検討が付きませんよね。

そんな時に100円均一で、セパタクローのボールと書かれたレザーのボールがあると、

つい買ってしまうかもしれません。（本来は、ポリプロピレンか竹製）

 

このように何も分からなかったので、自分の知っている判断の中から、

名刺入れを買うという「知らない」事を考えて、アルミケースという丈夫で派手ではない

名刺入れを買ってきたのです。

 

 

「知っている」人と「知らない」人の行動の違いに疑問を持ったのは、

ある環境イベントで川の中に入って魚を取るというイベントでした。

柄の細い網を持ってきて、柄がすぐに折れて使い物にならず、

団体が用意していた魚取り用の網を借りてる方がいらっしゃったのです。

 

あの網は虫取り網を持ってきていたのかな？と思っていたのですが、

つい先日、100円均一の店で魚取り網と書かれた柄の細い網が置いてあり、

ようやく分かったのです。

 

参加者は「知らない」人で、イベント側は「知っている」人の集まりで、

「知っている」人たちは魚取り網は柄の太い網を使うのが当たり前とか、

釣具屋さんで買うのが当たり前という考えがあり、当たり前過ぎて言葉にしていませんでしたが、

参加者は「知らない」人達で、知らない人の前にこれが魚取り網ですと100円商品があれば、

ついつい買ってしまうのです。

そして、「知らない」人は、また次のイベントでも柄の細い網を持ってくるかもしれません。

本人はこれは魚取り網で、前回はたまたま折れただけと思うかもしれないからです。

 

 

「知っている」と「知らない」では行動が全く違ってきます。

そして、「知っている」人からの目線で見ると「知らない」人の行動はとても変わっているように見えたり、

甘く考えているように見えたりするかもしれません。

「知らない」人からの目線で見ると「知っている」人の考えは全く分からず、言われて初めて気付くか、

何回も失敗を繰り返して初めて分かる事だったりします。

 

自分自身、「知っている」事と「知らない」事は混在しています。

「知っている」事は相手に分かるように相手の目線に立って伝える。

「知らない」事は何回も失敗するかもしれませんが、分かるようになっていこうと思います。